Thursday 1 March 2018

ユルすぎる先生の話 〜パスタ編〜



ある日、14時からチェロのレッスンで、
14時ちょうど位に先生の家に着いた。

先生はいつもドアを開けると同時に
手を差し出してくるので
握手をしてご挨拶する。

その日、先生は自分の手を見ながら、
「今まだお昼ご飯食べてなくて、
料理中で手が汚れてるんだ」
と言って、握手をしなかった。

レッスンをする部屋ではなく、
キッチンへ通され、
「お腹すいてる?一緒にお昼食べる?」
と聞かれた。

時間は14時だったし、
お腹が本当に全然空いていなかったので、
「ううん、大丈夫、お腹空いてない」と言うと
今度は横にいた奥さんが
「今日は何時にウィーンに着いたの?
着いたばっかり?
じゃあお腹空いてるよね?」
と言ってきた。

「いや、さっき食べたばっかりだから
本当に空いてないんだよ」と言うと
更に先生が
「せっかく誘ってるのに食べないって言うの?」と言うので
(別にそんなに嫌な感じではなく、半分冗談で)
「はい、じゃあ戴きます…」とキッチンのテーブルへ着席。

どうやら奥さんのレッスンが押していたらしく
奥さんはレッスンへ消えてゆく。
なるほど、餌付け作戦か。

「全然オーストリア料理とかじゃないんだけどね〜」
と言って出されたのは、
茹で過ぎっぽいショートパスタの横に
更に茹で過ぎっぽいインゲンが載っているお皿。
両方とも、ただ茹でただけで、味が付いていなさそう。
もしくは塩が振ってあるとか。

そこに出てきたのは、
冷蔵庫から取り出された、
両方とも同じ位ほぼ空っぽのペストの瓶2本。
先生が、「はい、これいる?」と言って
無理やりティースプーンの先っちょ分だけ掻き集めて
私のパスタの上に載っけてくれた。

って全然足りないんですけど。。
と思ったけど、横で同じ位ちょろっとだけ
ペストを乗せたパスタをせっせと食べ始める先生。

ん?これって、そういうものなのか?
と思って取り敢えず食べた。
やっぱりそんなに味が無かったけど。
(割と生地そのものの味みたいなのが
好きな方なので、幸いにも苦ではなかった)

先生はお代わりをし、
私にもお代わりを勧めてきたけど
本当にお腹が一杯で断ると、
「美味しくなかったんでしょ。
別にいいけど、
どう思われようと気にしないから」
と言う先生。

そこに、トイレが出なくて
トイレに篭っていて
お昼に遅れていた9歳の息子が、
結局出なかったらしく
お腹をさすりながらやって来た。

ペストの瓶の蓋を開ける息子。
ほぼ残りカスしか残っていないので、
もう一本の瓶の蓋を開ける息子。
こっちもほぼ残りカスしか残っていないので
大きなため息をついて、肩をすくめ、
呆れた顔で私に何かを訴えてくる息子。

やっぱ、このパスタの味付け設定おかしいよね!
と息子の気持ちが良く分かったけど、
先生は気にせず黙々とお代わり分を食べており、
取り敢えず私は黙っておくことにした。

せめて私にパスタを食べさせなければ
息子にもスプーンの先っちょくらいはペストが残っていたのに。

その後、ほぼ無味のままパスタを完食した息子。
インゲンは嫌いと残したまま
宇宙飛行士のオモチャで遊び始めた。
「こういう野菜食べたらトイレの調子良くなるんじゃない?」
と言うと、照れ笑いしながら結局食べてなかった。

その後「トイレ借りるよ」と言ったら
「ちょっと待って!息子が入った後だから、チェックしなきゃ」
と慌ててトイレチェックする先生に、
「何で!大丈夫だよ!」と言う息子。

そんな二人のやり取りを眺めつつ、
コーヒーも飲みつつ、
奥さんのレッスンが終わるのを待つ。

結局やっぱり長めにレッスンをしてくれるので
その日の先生の家での滞在時間が3時間強になった。

後日、また先生の家に着いたらご飯中の日があった。
その時は前日のハロウィーンバーベキューで
残ったソーセージとイモ。
また「食べる?」と言われたので
「お腹空いてないから大丈夫」と言ったら、
「僕がこないだひどいご飯を食べさせたから
いらないって言ってるんでしょ」
と言われた。

自覚は一応あるのか(笑)
訪問者に出すか否か以前に
息子にも、あれでいいのか。っていう。
栄養素が足りてないぞ。

そんな息子もチェロを習っているそう。
でも最初先生が教えようとしたら
毎回ケンカになるので、
別の先生に習っていて
練習だけ一緒に楽しくやっているらしい。

何でも、息子に一度
「お父さんは僕の父親なんだから、
きちんと僕の面倒を見なきゃダメだよ」
とダメ出しされたらしい。
手厳しいな、息子。
でも自分が息子だったら。と、何となく気持ちは分かる。

チェロ以外に周りは全く眼中に無く、ゆる〜い先生と、
既にしっかり者っぽい息子。
そして、たまにしか話す機会はないけど、
カラッとして気さくな奥さん。

オーストリアにホームステイしたら
こんな感じなのかなぁ、と
チェロを習いに行っているのに
そんな家族の雰囲気も結構楽しみにしていたりする。










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