Tuesday, 28 February 2017

「物静かなビジネスマン」


日経オンライン版で、なんとなく
噂のマサオさんについての記事を読んでいた。
逮捕された北朝鮮人の男性について「物静かなビジネスマン」という
表現がされていて、ふと思い出したのは上海に留学していた時のこと。

今はどうか分からないけど、
私が行った時の中国で語学留学をしようとすると、
大学付属の語学コースに通うことになる。
住む場所は人にもよるけど、
一番多いのは、大学についている留学生寮に住んで
その大学の語学コースへ通う人。
大学の寮なので、大学本科へ通う中国語ペラペラの
外国人学生も多く住んでいた。

私も斡旋会社を通したので、
勧められるがまま
通っていた大学の留学生寮に住んでいた。

一人部屋、部屋は個室だけどトイレとシャワーを二人でシェア、
部屋も二人でシェアの3通りがあって、
私は韓国人の大使館で働くことを目指す本科の女の子と、
部屋は個室だけどトイレとシャワーをシェアしていた。

と言っても作りがおかしいので、
入り口を入ると彼女の部屋があり、
彼女の部屋を通った奥に私の部屋への扉があった。
部屋に戻ると必ず彼女の部屋を通るので
学校では全く関わりがなかったけど、
毎日通る度に世間話をしていた。

ある日、滅多に見かけない
向かいの部屋に住んでいる人を見かけた。
黒っぽい服を着た二人組の男性。
二人でいるのに会話が無く、
あんなおじさん二人でこんな学生寮で何してんだろう。
みたいな二人。

その日部屋に戻って、
ルームメイト(?)にその話をすると、
彼女は声を潜めて彼らが北朝鮮人であると言った。
あんまり北朝鮮に詳しくなかった私は、
北朝鮮人ってこんな風にお目にかかれる人たちなのか?
と思ってビックリ。
彼女曰く、別の日にその二人組男性が話しているのが
聞こえたらしく、話し方なのか話している内容なのか
兎に角、北朝鮮人だと確信しているらしい。

そう言われると
学生寮におじさん二人で住んでいるのが既に怪しいのに
更に触れてはいけない存在に思えてきた。
今の私なら面白そうだから話しかけてみようとか
思いそうなものだけど、
その時はそんなこと思いもせず、
見かけたら気づかれない様に観察するだけだった。

ある週末のお昼頃、
出かけようと思って扉を開けたら、
おじさん二人が会話は無いけど仲良くお掃除していた。
部屋の中を掃き掃除していた様で、
と言っても塵取りも使わずに
廊下にゴミを掃き出しているだけ。
しかも結構な量のゴミ。

と思ってよく見たら、ゴミが動いている。
えっ、と思ってよく見たら、
ホコリにまみれた虫と虫の残骸。
それを廊下に掃き出しているものだから、
思わず「ちょっとあんた、何やってんの!」と
言いそうになったけど、
北朝鮮人だと思うと怖くて何も言えない私。

生きてるやつもいたから、
廊下の向かいである家に入ってきそうで
本気でイラっとして
イラっとした感じの視線を送ってみたのに、
こっちに気づいている素振りもない。
視線に気付かずに、中国に留学しただけで
一人前の工作員になれると思ってんのか、おじさん!
と思ったけど、
気づいているのに気付かないフリをするのも修行なのか?
と思って、結局小心な為、扉をキッチリ閉めて外出。
帰ってきた時に確認したけど、
虫たちは廊下の別の方へ行っていた。

その後その二人を見かけることもなく
私は留学生活を終えたのだけれど、
あの二人を思い浮かべながら
「物静かなビジネスマン」って
とってもしっくりくる表現だな。と思った。

いつも黒っぽい服を着て
周りと交流しようとしない異様な雰囲気。
いつ見ても二人だけの世界で生きてる感じだった。

私が今後あの国の方々とお目にかかることは無い気がするので
本当に今思えば話しかければ良かったと思うけど、
他人からの視線への対応を見られただけでも
貴重な経験だったのかもしれないと思ったりした。
韓国人が北朝鮮人と確信出来るくらいだから
工作員じゃなかったんだろうけど。

と国交の無い日本人だから思うけど
ちょっとネット検索すると、普通に政府のホームページとかで
観光の様子の写真とかが公開されている。
リンクを貼るのは怖いから貼らないけど
自分から知ろうと思えば結構情報が開示されているんだなと思ったりした。

-----------------------------------(実際の日経の記事)-------------------------------------

北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏の殺害に関与したとして逮捕された北朝鮮籍の男、リ・ジョンチョル容疑者(46)のマレーシアでの足取りが明らかになった。リ容疑者が雇用契約を結んだ同国の企業経営者らが語った素顔は、妻子と称する3人と暮らす物静かな男だった。殺害事件では後方支援を担ったとの見方もある。
 マレーシアの首都、クアラルンプール郊外のチュラス地区は、多くの中小事務所が集まる。中国製医薬品の輸入販売業を営むトンボ・エンタープライズの創業者、チョン・アーコウ氏は20日、硬い表情で語り始めた。「物静かなビジネスマンだと思っていた。衝撃だ」
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