Tuesday 8 August 2017

一年越しで手に入れた 2行のメッセージ


一年半位前から、プールに通っている。
会社の帰り道に車で寄るので
ブダペストの中心からは外れた場所にあるプール。

観光客はあまり来ないようで、
今まで自分以外のアジア人を見たことがない。
アジア人どころか、英語で会話している人も
イギリス訛りの英語を話す一人の男性を3回位見かけたのみ。
基本は夏でもハンガリーの地元民ばかり。

通い始めて初めての夏シーズンだった昨年の夏。
若くて細くて小さい黒髪の青年が、
このプールでバイトを始めた様子。

私が週に1-2回は必ず通っていたので
暫くした頃に私が荷物を預けて着替えに行く後ろ姿を見ながら
「XXXXX minden nap XXXX」
と横にいた別のバイトに言っていた。
(minden nap:毎日という意味)
パッと見たら、こっちを真顔でジーっと見ていたので
恐らく「あのアジア人、毎日来んな〜」とでも
言っていたんだろうと思われ。

その後もずっと真顔で無難に対応され続けること一年。
ある日から急に、窓口対応の最後に一瞬だけ
ニコッというよりニヤッと不自然な
作り笑顔を見せてくれるようになった。

あまりにもぎこちない笑顔なので、
からかわれているのか怪しいところで、
こっちも恐らく不自然な作り笑顔を返していた。
(若しくは私が笑顔だから無理やり返してくれ始めたのか?)

ある日、出口のセンサーの反応が悪く、
出られないでいたら、たまたまその青年が通りかかった。
あ、ちょっと青年くん!という感じで手を上げて合図したら
「What's proble〜m」と話せない英語で声をかけて
出してくれた。

その対応から何となく、
この人、1年経って、私の存在を認め始めたから
笑顔が出てきたんだな、と納得した。

昨日の午後のゲリラ豪雨+雷から、今日の午前中まで雨だったけど
会社を出る頃には止んでいたので今日もプールに行った。
(プールは夏場、屋外プールしかなくなる)

受付にあの青年がいて、
ハンガリー語で何かベラベラ言われる。
何か雨の影響で普段と違うんだろうなとは思ったものの
「わからない」と言うと、
真顔でパソコンに向かい始め、
真顔で無言の3分間放置される。
何かプリントアウトしたぞと思ったら、
わざわざネットで英語に訳した2行の文章が
真っ白い紙の上の方にポツンと印刷されていた。

「水泳用のプールは閉まっていて、ビーチプールしか開いていない」

Googleはハンガリー語をきれいな英語に訳さないはずなのに、
割ときれいな英語の文章が書いてあった。
恐らく一回自動翻訳した後にわざわざ手直ししたとか、
そんな感じ。
青年優しいじゃないか。
(自然環境的には完全にアウトな行動…笑)

青年の優しさにも感動したし、
ここまで来るのに一年もかかったのかということにも
別の意味で感動した。
私が留学生だったら、青年の笑顔を見る前に帰国しているぞ。

思い出の出来事になりそうだったので、
その紙を持って帰りたかったのに
青年は恥ずかしかったようで、
窓口越しに私の手から紙を取り上げてしまった。

私がハンガリー語を話さないのも理由の一つだろうけど
笑顔を引き出すのに一年かかるのかぁと
しみじみ思った。
そして1年経って受け入れてもらったら
こんなに優しいのか〜ともしみじみ思った。

もちろんこれは極端な例で、
会社とか、お店のハンガリー人とか最初から普通の人もいる。
でも普段から感じているハンガリー人の警戒心が
すごく現れている出来事だったなと思って心に残った。

こんなにジックリ時間をかけて
炭火焼の様に築き上げたプールの青年との関係。
これからも、お互い不自然な作り笑顔で熟成させていこうと思う。









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