この間ウィーンに電車で行った帰り、
駅のカフェで時間を潰していた時のこと。
聞き馴染みのある「偽R」を多用した英語が聞こえてきて、
店員に何度か聞き返されてた後、
二つ先のテーブルにアジア人の青年が座った。
どうやらスイーツ男子 + クチャ男くんの様で、
クチャクチャ音を立てながら、
「フンフン、こっちもイケる。これも!」と
聞こえてきそうな食べっぷりでケーキを2個
同時に瞬時に完食していた。
この「偽R」、勝手な見解だと、
「私英語話せます」ってプライドありそうな感じなんだけど
割と通じない英語になっちゃっている人に多い
日本人特有の喉の使い方から成る
RになりきってないRだと思っている。
しかもこれを使うのは、割と男性に多いと思っている。
本当はRが出てこない言葉でも
取り敢えず日本語よりも、まろやかな音にしとけば、
それっぽいでしょ。みたいな。
(私も他人のことを言える様な英語は話さないけど
その分過度なプライドも無いつもり。。)
結構女の人って間違えを気にしなかったり
表情とか他のことでも伝えようとするからなのか
カタカナ英語しか出来なくとも、
バリバリのカタカナ英語でシンプルに伝えるので、
結構会話が成り立っていることが多い気がする。
そんな、恐らく日本人の青年の「偽R」たっぷりの
やり取りを聞きながら、思い出したことがあった。
私はスペインのサラマンカで7ヶ月スペイン語を学んだ後
2ヶ月だけバルセロナの別のスペイン語学校へ通っていた。
バルセロナに移った頃には既にB2の試験勉強も終えていて、
試験は受けてないけどB2終了前後のレベルという中途半端なレベルだった。
「あなた丁度B2とC1の間な感じだけど、どうする〜?
B2はもうやったかもしれないけど、C1より大事な文法が沢山あるし
C1って難しい語彙とか中心だからB2もう一回やってもいいと思うけど。」
と言われ迷った挙句、
どうせバルセロナは勉強というより
住んでみたかっただけのオマケだったので、
記念にC1を受けてみることにした。
C1と言っても、母語がスペイン語に近い
フランス人、スイス人、ブラジル人のマダム達しかいなくて、
母語を直訳して適当に喋ってるけど通じてる。
みたいな割とレベルが低い感じで、
確かにB2のクラスにいたロシア人とかの方がレベルが高い感じだった。
授業も「眼科」とかの「目の医者」って言えばやり過ごせる様な語彙や、
そういう状況ってあんまり無いですよねっていう時に使う文法とかで
確かにB2をもう一度おさらいする方がスキルアップになりそう。
という感じだった。
授業もそんなに面白くないし
クラスメイトは家庭があるので時間が合わないし、
そもそも性格がきつそうで合わなそうだった。
ということで参加した課外授業で
とあるA2のクラスの子たちと仲良くなった。
このA2のクラスの子たちは、
C1のマダム達より年齢が近く、その後よく皆でランチをしていた。
ある日、その中のドイツ人の女の子から質問があった。
それは同じA2のクラスにいた日本人の男の子について。
彼は、「ザ・良い青年」という感じで
大人しそうな感じだった。
でも建築を学びに来ていて、芯は熱い感じで
「サグラダファミリアの主任彫刻家として有名な外尾悦郎さんに会いに
サグラダファミリアへ行ったらタダで入れてもらって
裏を見せてもらった。
でも外尾さんは結構鼻高そうな感じだった」
みたいなことを目を輝かせて話してくれたことがあった。
そのドイツ人の女の子が言うには、
先生やクラスメイトに何か質問された後に、
この男の子が何か言うまでに必ず「間」があるのだそう。
この「間」は一体どういう意味なの??
と興味津々の真顔で聞かれた。
その質問を隣で聞いていた中国人、ブラジル人、アフリカ人の
女の子たちも加勢してきて
「そうそう、毎回そうなの!あれは一体どういう意味なの??」
と聞いてきた。
現場を見ていないから推測の域だけど
その男の子の感じからして
単に答えを考えてる「間」なんだろうと思い
「日本人は話す前に考えるから、考えてるんじゃない?」
と説明をした。
そのドイツ人はあまり納得しておらず
「でもあなたと話す時に、あなたには「間」がないじゃない?」
と言っていた。
そう言われてみると、
自分だったらそこまで不自然な「間」が出来る前に
分からないとか考えてるとか相手に通じる様な
表情なり音なりを発していそう。
でも何かあの大人しそうな青年がクラスで
分からないけど間違えたくない時に
姿勢も表情も変えずに「間」を作っているのが
容易に想像出来た。
私の会社にハンガリー人に対して文化の違いを理解する為の
「日本人とは」みたいな教材がある。
これはハンガリーの大学で日本文化を教えている
社会学の先生が作成したもので、
(日本人に対して「ハンガリー人とは」という逆バージョンもある)
その中に、
「会議中に腕を組んで目をつぶる日本人の中年男性が多く見られるが、
あれは居眠りをしているのではなく、会議の内容に集中して考えているのだ」
という説明があるらしい。
すごい笑える。何その下らなさと真面目さのバランス。
でも考えてみれば、あれも一種の「間」の取り方の違いだよな。と思った。
確かにおじさん達は何で目をつぶるんだろう。
目を開けていたら何で考えられないんだろう。
そして確かにそういう女性って見たことない気がする。
ウィーンからブダペストの東駅に着いて電車を降りると
例の日本人の青年がホームの斜め前を歩いていた。
「うわぁー、なんてボロいんだろう」って感動してるのかなぁ。
と思える位、キラキラした目でキョロキョロしている
ちょっと挙動不審な彼を見て、
日本人男性って外国人にとって
日本人女性よりも遥かに不思議な存在なのかもなぁ
と考えてしまった。
私が外国人に文化の違いを感じる時、
感じ方にそんなに大きな男女差は無いけれど、
やっぱ日本は男女の差がはっきりしている文化なので
文化の違いの与え方にも
はっきりした差があるのかなぁと
勝手な思考を巡らせた鉄道の旅。